重症感染症診療のエキスパートを育成するプログラム
日本では数少ない、救急集中治療と感染症のダブルボード取得を目指すプログラムです。敗血症やCOVID-19に代表されるように救急集中治療と感染症は密接に関連する分野であり、感染症診療の質が患者予後に大きな影響を及ぼします。しかし、日本では重症感染症診療に重点を置いたトレーニングを受けることができる環境が十分には整っていません。
そこで今回、日立総合病院と筑波大学附属病院を中心に、茨城県内の医療機関で連携し、今後の重症感染症診療をリードするエキスパートの育成プログラムを立ち上げました。
このプログラムでは、救急集中治療・感染症のダブルボードを持つ指導医を中心に、複数の感染症指導医・救急集中治療指導医から実践的な指導を受けることができます。研修内容は個人の希望に合わせて調整可能で、内科専門医の取得も可能です。救急医・集中治療医など、重症患者診療の最前線に立つ医師を主な対象としますが、初期臨床研修終了後の直接応募にも対応します。
本プログラムにより、重症感染症・敗血症を適切かつタイムリーに診断・管理し、重症患者の転帰を改善する能力を身につけます。また、一般感染症はもちろんのこと、法定感染症やHIV/免疫不全感染症・渡航感染症、感染管理/微生物検査の修練も積みます。これらにより、感染症専門医として十分な診療能力、またアウトブレイクや公衆衛生上の危機に対応できる能力を涵養します。
卒業後は、救急集中治療領域における重症感染症診療・感染対策のエキスパートとして、各施設のER/ICUのリーダー、ひいては日本/世界のオピニオンリーダーとなることを目指します。
3年間のプログラムで、主に2ヶ所の感染症専門医認定研修施設 (筑波大学附属病院と日立総合病院)で研修を行います。いずれも感染症専門医認定研修施設の指定を受けており、且つ300万人口の重症患者を集約的に診療しているため、継続的なER/ICU診療を通じて、急性期感染症診療/総合診療の経験を積むことが可能です。
日立総合病院では、日本でも有数のECMO管理数を誇るICUで、ECMOや急性血液浄化療法、人工呼吸器管理下といった重症病態における感染症マネージメントを学びます。
筑波大学附属病院では、茨城県内から集約されるHIV感染症/AIDSや渡航感染症、豊富な院内感染症コンサルテーションや、大学病院ならではの特殊病態下の患者の感染症診療を通じてトレーニングを行います。
その他に、希望に応じて国内専門施設での短期研修を組み合わせ、総合診療(例:水戸協同病院、東京医科大学茨城医療センター)や呼吸器内科(筑波大学附属病院、筑波学園病院)、膠原病や血液悪性腫瘍(筑波大学附属病院)などの周辺分野についても研鑽を積みます。
海外留学の機会も提供します。希望者は米国や東南アジアなどへの年一回程度の短期留学を行い、日本では経験しにくい感染症の修練を積むことができます。また、臨床研究に精通した医師が各病院に複数在籍しており、研修中の研究・論文執筆も積極的に指導します。
国内の高次医療機関で救急集中治療・感染症診療の中心として活躍できる専門医の育成
日立総合病院
日本でも有数のECMO管理数を誇り、豊富な市中感染症を含む数多くの重症症例が来院するER/ICUで、感染症/集中治療のダブルボードの指導医(橋本)の綿密な指導のもと、ECMOや人工呼吸器、血液浄化療法管理下といった集中治療領域における最先端の感染症マネージメントに習熟する。
日立総合病院 - 研修の特徴
1 軽症〜重症まであらゆる臓器・重症度にまたがる豊富な市中/院内感染症
2 集中治療領域ならではの迅速微生物診断や薬物動態学を駆使した最先端敗血症診療
3 重症患者のECMOや急性血液浄化などの集中治療管理下での感染症マネージメント
4 豊富な症例・研究をもとにした症例報告、臨床研究の実践
筑波大学附属病院
救急集中治療科で免疫不全や複数疾患合併などの複雑な症例の集中治療・感染症診療を修練する。感染症科では集約的な渡航感染症やHIV感染症/AIDS症例、難治性感染症、最先端の微生物検査を経験し、先進医療についての多施設共同研究などのリサーチプロジェクトに参画する。
筑波大学附属病院 - 研修の特徴
1 臓器移植を含めた多様な免疫不全・特殊病態下の集中治療・感染症マネージメント
2 経験豊富な指導医のバックアップのもとで、外来・入院を通じてのシームレスなHIV感染症/AIDS診療や渡航後感染症診療・法定感染症診療・トラベルクリニック
3 大学の検査・研究環境を活かした最先端の微生物検査・多施設共同研究